私の友人 Jericho-Princess。

彼はまだ若く20代半ばの青年。現在、上京して新宿区百人町にある淀橋教会に通っている。

私はJerichoと非常に仲良し。2年前、彼が洗礼を受けた時の喜びの声と笑顔は忘れられない。半年くらい続いただろうか…。Jerichoの家で毎週土曜日に二人でご飯を食べ、ゲームをして、聖書勉強をした(差し入れのピーナッツだけはなぜかお気に召さなかったようだ…。)私が彼に対戦ゲームで勝つことは稀だった。奴は相当に強い!

淀橋教会には素晴らしい家庭がある。江東区東陽町にある川◯家だ。ここにエクレシアが実現している。Jerichoのような異色の!?人を温かく受け入れ、家族同然のように付き合っている。昔のアメリカの家庭ドラマが今そこに現実に実現している。笑いあり、ジョークあり、聖書あり、ご飯あり、歌があり、キリストの愛がある。

淀橋教会に行った折には、今は聖歌隊に所属するJericho-Princessを尋ねてほしい。彼は喜んで迎えてくれるだろう。そして彼とぜひ川◯家に行ってみてほしい。ここにエクレシアがある。個人的には淀橋教会のダイアモンドと言ってもいいとさえ思っている。

では、Jericho-Princessの証しをどうぞ

談話記録
「こんなに大きな家と、たくさんのお金があるというのに、貴方は何が不満なの?」
そう言われたのを今でも鮮明に覚えている。

俺の生い立ちの話をしてやろう。
俺の家は古くから続いている真言宗(仏教の宗派の1つ)の家系で、先祖と血筋を常に大事にしていた。真言宗ってのは、日本神道との繋がりも深く、仏教と神道とを両方同時にやる二刀流スタイルってのも存在した。俺の家もそうだった。仏壇と神棚が2LDKの家に両立していた。俺の婆さんは地元で有名な寺の祈祷師(?)で、爺さんは岡山でもデカい神社である吉備津神社で幹部をやっていた。奇妙だよな?俺の家族は5人編成で両親と兄貴2人と俺で構成されている。兄貴2人が産まれた、もとい、作られた理由は、この信仰のスタイルの「引き継ぎ作業」を遂行することにある。長男は父型の実家を引き継ぎ、次男は母型の実家を継ぐ。ここでポイントなのが母型の実家も継ぐ必要があるという点だ。母型の実家には男が産まれず、墓と血筋を守る人間がいなかったのだ。墓守の役目を果たさなくてはならないのだ。本来、この俺が産まれる必要なんかどこにも存在しなかったんだ。だが、話が少しおかしくなってしまってな。嫌な兆しが長男の元に現れだしたんだ。その動向に問題があったらしく、奴は妙なことに家の事に全く興味を示さなかったそうだ。家の外での活動を好き好んで、家族にすら興味を向けなかった。親族は長男の今後を危惧して、「こいつは家を捨てて、独立するかもしれない」という嫌な予感を感じたそうだ。そして親族は俺の母親に1つの命令を下した。「もう1人男の子を産め。もしもの際、そいつに正式な継承者を任ずる事ができるように」要するに「代え」を用意しておけというものだった。そして新しく男の子が産まれて、親族はとても祝福したらしい。先祖代々の信仰を引き継ぐ明けの明星の到来を、心から祝福したそうだ。そして名前をつけた。「こいつは誰よりも神を愛する、そして誰よりも神に愛される。神様と正しい関係を結べる。崇拝の資格・資質を持つ男になる。」
その男を◯◯と名付けた。「神と愛し合える男になってほしい」親族の心からの願いは、しばらくして確かに叶った。息子が「キリスト教徒」になるという奴らにとって、最高に皮肉な形をとってだ。笑えるよな?真言宗の血筋に現れた希望の星が、まさかベツレヘムまで続いていたなんて、その時は誰も想像できなかった。

 ガキの頃の話をしてやろう。
俺の家はよく荒れていてアナーキーだった。平和とは無縁だった。自分の実力しか信じない長男、手癖と頭が底なしに悪かった次男。色々ひどかったが、中でもひどかったのが親父の酒癖だった。親父は仕事から帰るとすぐ、酒を飲んで泥酔していた。泥酔した親父はいつも2LDKのマンションの中で迷子になっていた。トイレの場所がわからなくなるまで酔っていたんだ。そういえば、トイレのドアと玄関扉を間違えちまって、外に出て行ってしまったこともあったな。それでどうなったかって?コンクリートの階段を受け身も取れず、頭から転がり落ちたんだ。見に行ってみると、階段の踊り場で親父の頭皮がパックリ割れていた。すぐ病院に行き、頭を何針か縫ってもらい、アイツは帰ってきた。家族が呆れた目で見ていたのをよく覚えているよ。他にも仕事から帰ってこず、次の日の夕方に、家から370km離れた所で、警察に身柄確保されたこともあったな。親父の酒癖の悪い点はもう1つあった。それは記憶が喪失するということだ。泥酔中に起きたことは、酔いが覚めるとコロッと忘れてやがる。休日も朝から泥酔しているせいで、家族のことなんか何も知らなかった。だが、親父の酔いが覚める瞬間ってのが、時々存在した。それは俺がかんしゃくを起こして、とち狂っているときだ。俺は昔からよく、かんしゃくをおこしていた。ガキの頃からフラストレーションが溜まっていたんだ。兄貴も荒れていたせいで、家族全員が集まることはほとんど無かった。そのせいで、他の家みたいに「家族で普通に食卓を囲む」そんなこともできないのか?もっと「家族らしく」できないのか?よくそんなことを考えていた。俺の発言を親父が酔いを覚まして聞いてくれる時は、たいてい俺が泣きじゃくって家具やらなんやらをぶち壊している時だった。そん時には、話し合いなんか成立するわけも無かった。家族はキレてる俺に近づかなかったしな。親父が正気であるほんのわずかな刹那に、俺はよく言われていた。「結果を残せ」ってな。親父はいつも俺に結果を求めていた。まぁ無理も無い。長男は基本的に外でほっつき歩いていたし、次男は真っ暗な部屋でオンラインゲームに明け暮れていた。兄貴達の二の舞にならないよう、狭苦しく育てられた俺には、ミスが許されなかった。結果を出せば、「兄貴と比べて優秀だ」という、いつもの台詞を聞かされていたもんだ。「兄貴達よりも優秀」当時の俺のアイデンティティーはそれだった。結果を出せなかったときには、親父が俺に対して、落胆した顔を浮かべていた。あれを見て、また俺はかんしゃくをおこした。兄貴を見下すか、かんしゃくをおこして物を壊す。そればかりだった。「家族らしさ」を求めて、俺は家庭をぶち壊していたんだ。クソ哀れだよな。

 学生の頃の話をしてやろう。
学生の頃の俺は不安定だった。思春期の多感な時期に鬱病になる。ありふれた話だ。自分の容姿を好きな奴に、ずっと貶され続けただとか、家庭に平安がないとか要因は様々だった。昔の俺は今と違って根暗で辛気臭い、つまらんクソッたれで、なにより甘さがあった。もめ事が起きたって、堂々と舐めた言動をした奴を見つけて、その頭蓋を砕いてやれば済む話だったのに、昔の俺ときたら、全部自分のせいにしやがった。「悪く言われるのには正当な理由がある」だとか「酷い自分にも改善点がきっとある」だとか、ふざけた話だ。胸クソ悪ぃよな?そうやって毎日、自分を戒め続けた結果が酷い鬱病だ。胸の奥にずっと鋭い痛みを感じていた。四六時中だ。俺はガラス片か何かが心臓に入っちまったんだと思っていた。痛みの元を取り除こうと、よく胸部をかきむしっていた。「取れない。取れない。」って、のたうち回りながらな。気色悪いよな?それからしばらくして、痛みのキャパシティが限界になった。頭のネジが壊れたんだ。枯れ枝を踏み折ったような、ペキペキという音が脳内に響いた。俺と次の俺は会話をし続けた。次の俺は古い俺を箱にしまった。箱はスーッと小さくなって、やがて見えなくなった。古い俺とはしばらく会ってない。生まれ変わった俺が出した答えはシンプルだった。「俺に舐めた言動をした奴らを殺してやる、例外なく全員だ」それから俺は武術やケンカを勉強した。ずっと楽しみにしていたんだ、奴らの喉を引きちぎって血の噴水の中を泳ぎ回る、その瞬間をだ。3年程、殺意を煮えたぎらせながら鍛錬すると、性格が変わった。恐怖心が無くなって、おどおどしなくなった。舐めた奴らがいたら、簡単にグチャグチャにしてやれる。人を容赦なく殺せる自分に自信が持てたんだ。その頃から今のような堂々とした雰囲気になったんだ。ちょうどそのぐらいの時、1番最初に殺してやりたかったあのクソッたれは、親の都合か何かで遠くに引っ越した。その後、色々あって自滅して廃人になったらしい。どうでもいい話だがな。で、薄汚い精神疾患者から健全な殺意の塊になった俺は、視野が広くなって1つの事に気付いた。精神的に参っている奴は、俺以外にも腐るほどいるってな。多感な思春期学徒で編成された学級・学年では、手首が傷だらけの奴やら、ストレスで拒食症になった奴やら、とにかく死にたい自殺志願者、そんな輩がたくさんいた。俺はそいつらの苦しむ姿が、昔の鬱だったときの自分とそっくりに見えた。俺は、そいつらが心配で仕方なかった。なんとか助けられないのか?そう思って接近してみても、奴らはひどくおびえていた。まぁ無理もない。その頃の俺は、武道経験者にケンカふっかけるのが好きなキチガイかんしゃく野郎だった。完全に危険分子側の輩だった。奴らを助けるには、何か別の手を打つ必要があったんだ。何かトリッキーな手がな。

 俺がウィッチドクターだった時の話をしてやろう。
ウィッチドクター、つまりヤブ医者だ。魔術やら呪詛、占術やらと医学を混濁させた本当の医者とは程遠い存在。それがウィッチドクターだ。周りの精神的に参った奴らを認識してから、そいつらを助けたいという気持ちや、自分も何か「真っ当なこと」がしたいという健全な意識があった。ひねくれ者でマイナーな物を好み、オカルト分野のダークな雰囲気に惹かれた俺は、タロット占いの技術を勉強し始めた。宗教家族出身の俺は昔から欲しかった、「人智を超越する何か」との接点がな。この占い師になるという選択が、まさか後の人生までも左右するなんて、当時は想像もできなかった。お前は詳しくないだろうが、俺の占いは妙に評判が良かった。向かいに座ったクライアント(相談者・依頼者のこと)が初対面だろうとすぐにわかった。そいつの恋人が浮気しているのも、そいつが束縛しまくっているというのも、セックスの相性が良いことも、何でもだ。当てずっぽう?プラセボ?それらとは違う。俺もその辺は勉強したが、それらでは説明できない。明らかに数学的確率を凌駕するような占い結果がよくでていた。理系のオタク野郎ですら、俺の占術を信頼するほどにだ。また俺は精神障害やら脳障害に関しての知識、メンタルカウンセリング技術、マントラ、まじない、邪教なんかを勉強していたこともあり、俺の診察はカオスでコンテンツが豊富だった。クライアントからの評判も高かった。お前も覚えているだろ?白い仮面を付けたヤブ医者の話を。そうだ、ドクタージェリコだ。話を戻そう。で、いつからかリピーターが集まるようになって、やがて小さなコミュニティができるようになった。そこは妙なことに俺以外はほとんど女だった。野郎共は俺の魔術を信じてはいたが、よほど困窮したときしか、俺の診察を受けなかった。脆いのはいつだって女だ。鬱気味な女が集まって、やがて女を大事にする思想が強い、歪なフェミニズムコミュニティが完成した。オカルトオタクの集まりみたいなもんだ。そこは比較的平和だったが、厄介な点もあった。魔術中毒者が出始めたんだ。何をするにも俺の診察を求めてくる。「前回の診察で指示は出した。それを遂行してこいよ?」そうやって突っぱねることも何回かあった。俺はこれではダメだと感じた。しばらく考えて、俺は1つの結論・最善策に辿り着いた。それは自身の魔術をコミュニティ全員に伝授するというものだった。そうすれば有事の際、患者自身が治療を行うこともできる。誰かが患者になった時、誰かがその人間の医者になる。万人が万人の医者になれる。この社会をそんな、ウィッチドクターのみで構成された国にする。全員が救世主になれば、神なんか必要ない。それこそが俺のかつての野望「医療国家計画」であった。今思えば人間的で背徳的で俺らしいな。コミュニティ内で今のように、誰か一人だけが活躍するシステムでは限界がある。そこで俺はリーダーの地位を捨てて、コミュニティの1人になった。女性コミュニティの一員としてだ。その時の偽登録名義が◯◯絵理子だ。名前の由来は夢の中に出た、俺の妻と称する女の名前だ。ちなみにこの名前は、お前も知っての通り今でも使っている。今村という名字はわけあって無くなったが、このエリコという名前をとても気に入っているんだ。おっと失礼、話が逸れたな。で、この理想的な社会、医療国家計画だが実際は上手くいかなかった。コミュニティの皆が求める物はそんな高尚なものじゃなかった。技術を会得する努力よりも、今ドクタージェリコの診察を受けられたらそれでいい。そんな奴らばかりだった。刹那的な視点でしか物を見ることができない。結局、患者共はなるべくして患者になっていたというわけだ。最終的には、俺だけが経験を積んでいき、優秀な魔人は俺1人だけだった。俺は魔術やらオカルトやらに没頭し続けた。「人智を超えた大いなる力は必ず存在する。私はいつかそれに触れるだろう。」そう確信していた。

 神との出会いについて話してやろう。
魔人になって5年程経つと、「兆し」が見えるようになった。俺の運命に何が起こるのか、何が必要なのか、何が呼んでいるのか、全部感じることができるようになった。またそれだけじゃなく、必要な物が自然と手に入るようになった。情報、文献、技術、様々なものが手に入ってきた。「引き寄せの法則」だ?すまない。そこはまだ勉強できてないんだ、またにしてくれ。まぁ、簡単に言うとシンクロニシティ理論、つまり共時性をモノにしていたんだ。タロット占いは人間の運命とカードを共時性によって繋げて…
何?よくわからない?それなら、また調べといてくれ。話を続けよう。ある日、異変が起きたんだ。妙な胸騒ぎだ。大きな事が来る、すぐわかった。そして俺はその後の予想外な展開に驚いた。周りに急に増えだしたんだ、キリスト教関連の物がだ。ネットニュース、テレビのバラエティ番組、新聞の記事、たまたま寄った小道にあった小さな教会。滅多と行かない図書館に調べ物をしようと向かえば、やはり本棚の新書コーナーの「キリスト教聖人図鑑」が俺の右手に引っかかった。「俺は呼ばれている、奴らの神に。」だが、不思議でしょうがなかった。何しろ俺は人間が人間を助けるような人間至上主義、救世主不在を理想としていたし、キリスト教徒が魔術を殺してしまうほど毛嫌いしているのも知っていたし、俺自身が平和ボケした奴らとは無縁な存在だと思っていた。「神はなぜ私を選んだのか」俺は知りたかった。俺はHVK-301の一人「Krazy-Krusher」の元を訪れた。俺は奴に言った、「キリスト教徒の人間を俺に紹介しろ」ってな。Krusherは俺が知る人間の中で最も広い人脈を持つ男だった。奴と会って2日後、奴は俺の元に来て言った。「お前は明日、KGKとかいうキリスト教団体の合宿キャンプに行くことになった。今日の夜、お前は高知一粒の麦キリスト教会とかいう教会に泊まって、翌朝合宿キャンプに向かう。俺はお前の戦いを見たい、よってこの俺も同行する。」あまりにもスムーズな展開に俺はマジで驚いた。「やはり神は、この背徳の魔人を呼んでいる。」俺は教会に行く前に自分の運命をタロットで占った。占いの結果は今でも覚えている。「正位置の隠者」のカードだ。タロットは俺に語りかける。「お前が次に見るのは周りの環境や、周りの人間ではない。次はお前自身を見つめる必要がある。長い時間がかかるかもしれないが、とても大きな物を見つけられるだろう。それに物質的重量は無いかもしれないが、だがお前の人生の中で何よりも重たい物の1つになるかもしれない。しっかり自分を持って勉強しておいで。」俺は全てに後押しされて教会に向かった。もちろんいつもの仮面を着けてだ。教会で森澤先生という牧師に会った。彼は俺を見て、とても驚いた。「会って目を見て、すぐわかったけど、君クリスチャンになるよ。若い頃の僕とおんなじ目をしているもの。」そう言われたのを覚えている。俺はその牧師に少し信頼感を持てた。あの時のブラックコーヒー、美味しかったな。

 KGKに行った時の話をしてやろう。
KGKの奴らは本当にクリスチャンだった。周りにクリスチャンがいなかった環境で育った俺にはそれだけで驚きだった。最初に接触したとき、彼らは俺を見てドン引きしていたな。白い仮面、攻撃的な言葉、ニヒルな態度、背徳的な思想。何もかもがイレギュラーだった。すぐに囲まれ、俺は1人対13人で質問攻めにあった。彼らからしても興味があったのだろう。あーでもない、こーでもないと魔術と信仰、現代でどちらが淘汰されるべきか。そんな討論が白熱し、魔人とKGKメンバーとの激戦は朝の5時まで続いた。これは後で聞いた話だが、俺がいない間は、彼らは俺の話で盛り上がっていたそうだ。「アイツだけは絶対クリスチャンにならない。」「神様はなんでアイツをここに導いたの?」「アイツは二度と来ないかもな。」「どうしたらいいの?」「とにかく祈るしかないね。」みんなそんなことを言っていたらしい。合宿が終わった後、俺は高知一粒の麦教会に通うことになった。魔術の知識・技術を敵側から勉強したかったんだ。熱心だな。それから1年程、その牧師と討論し続けた。そして、俺はこの聖書とやらが邪悪な物では無いと判断した。俺とやり方が少々違うが、弱い奴らを助けたいんだろ?なら手伝ってやってもいい。そう思って教会メンバーとして正式に所属した。そこからずっとその教会で生活して、俺は肌で感じた。この教会、俺の知っている世界と違って平和すぎる。俺はずっと信じられなかった。「何故混沌が無い?盗みを働くカスも、泥酔しっぱなしのMF野郎も、とち狂う破壊主義者も、ここにはいない。」これが現実に存在し得るのかと、ずっと驚いていた。俺はこの景色に平安を感じた。そしてそれが現実的に再現可能だということを、ずっと家族や後の世代に証明してしきたいと強く思った。
そして俺は信仰告白をした。
魔人は、医者は、ドクタージェリコは休業だ。真に必要な時、奴はまた必ず来る。奴はいつだって正しかったからな。俺のこの時の信仰は、まだそこまで大きいものではなかった。だが、胸クソ悪い事が2つあった。俺がマジでクリスチャンになりたいと思ったのは、そこからだ。

 俺の母親の話をしてやろう。
奴は俺たち3人兄弟と親父のことをずっと心配していた。自分のことなんかどうでもよく、ずっと身を挺して戦っていた。俺が中学生の頃、奴は働きに出た。家に金は十分あったが、それが正しい事のために使われる保証は何処にも無かった。奴はそれを感じていたのかもな。それで老人ホームで働き出したんだ。奴は元々、人を助けることを生き甲斐としていて、結婚前は外科医の助手か何かをしていたそうだ。このあたりは俺も詳しくない。で、当時のブラックな老人ホームで働いて稼いで、何か買いたかったのか?それは違う。その金は3兄弟の結婚資金だそうだ。結婚には大きな金がかかる。ガキ共が苦労しないよう、奴は朝から夜まで働き続けた。奴が血を絞って貯めた金は600だ。1人200だ。あのクソ薄給でよく貯めたよな、マジでよ。だがあの野郎、身を削りすぎた。ガンになりやがったんだ。しかも発癌部位も悪い。首だ、リンパだ。摘出するには頸動脈を引きちぎる以外に道は無い。転移確率もかなり高い。詰みだった。クソが。奴がガンになって病院に隔離されたあたりから、家はさらに廃れた。親父は仕事が忙しくなり、始発に乗って終電間際に帰ってきていた。兄貴2人は既に独り立ちしてしまって、家には俺しかいなかった。俺は孤独な開放感以外で自分を慰められなかった。高校に行って授業を受ける、気分が乗らない時には授業中にどうどうと退出。街を徘徊して、晩になったら塾に行き、帰って寝る。好き勝手だった。たまに母親から電話が来た。奴は「手術のおかげでよくなっている。」と家族全員によく抜かしていた。それが嘘だって気付いたのは奴が死ぬ2週間前だった。家族の誰もが気付かなかった。面会も拒否していたしな。あの野郎、5年近くも1人で苦しみ続けたんだ。俺たちに迷惑をかけないよう一切音をあげずにだ。死ぬにはあまりにも惜しい存在だった。だが俺の成人式の2ヶ月前に、奴はくたばっちまった。奴がいなくなってから家はかなり荒れた。無理も無い。家族の中で、唯一の真っ当な奴だったんだからな。親父の酒癖は最悪になった。親父は臓器がダメになるまで酒を飲んだ。病院に行って、帰って酒を飲んで、病院に行って、帰って酒を飲んで、マジでクソだった。泥酔して床に転がる親父を見て、兄貴2人は武田家を完全に見限った。一家離散だ。俺は親父を怒鳴り散らした。「奴が死んだ今、我々のすべきことは何だ!?述べてみろ!!このクソガキが!!立て!!立って抗わんか!!それとも俺にここで殺されたいのか!?クソが!!」親父は泣きながら「もういい…もういいんだ…」と崩れ落ちた。俺の家族はぶっ壊れちまった…。
俺の母親は遺言をいくつか残していたんだ。新しく建てる家は父型の実家と母型の実家の中間地点に建てよう。そしたら正月とかに親族みんなで集まれるし、アクセスも良いから、子供もすぐ帰省できる。駅からクソ遠い田舎に建てると誰も帰ってこれない、寂しい家になる。そんな遺言があった。だが、その遺言は棄却された。母親がくたばったことで母型の家の発言権が弱くなったからだ。武田家は奴を失った傷が癒えだしてすぐ、母親の遺言を無視した行動をとり始めた。奴が命を削って稼いだ600も奴の保険金もどこに行ったのか、俺ですら知らない。ただウン億円規模の大きな家2つが田舎の山の麓に建った。アクセスの悪いそこには、正月ですら誰も帰ってこなかった。今は親父と親父の母親が2人で贅沢に暮らしているらしい。ほとんど空き部屋だけどな。もちろんこれがきっかけで2つの実家、両家は敵対した。母型の爺さんは娘の死を利用されて、遺言もガン無視されているとキレて、泣いていたな。アイツは命を捨てて戦った。だが、残ったのは墓1つだ。遺言も誇りも希望も平和も、全部燃やされちまった。用が済んだら捨てて燃やす。可燃ゴミと一緒だ…。俺はこの状態のまま、次の世代にバトンを渡すべきではないと確信している。誰かが立ち上がり、正義を行わなくてはならない。

 胸クソ悪い話はもう1つある。

P2_Corpseの話をしてやろう。
P2_Corpse。お前はあの女のことをよく知らないよな?アイツの話はあまりしたくないが、俺の人生を語る上で、奴の存在はなくてはならないだろう。人生が変わるとき、それは奴との関係性が変わる時だった。俺はアイツと生きてきたんだからな。出会ったのは高校一年の時だった。いつもすみっこでしょんぼりしているアイツ。話しかけると、嬉しそうに笑顔を見せて可愛らしかった。鬱気味な俺が翌日まで自殺せず踏みとどまって、また逢いたくなるほどな。箱入り娘で、世間知らずで、バカな奴だった。奴の世間知らずさには、よく振り回されたな。そこからは、よくある三流ドラマだ。そいつの家は厳しいらしく、高校生の間、そいつの男女交際を認めてなかったんだ。それでも俺たちは、隙を見て連絡を取り続けた。頭のネジがちぎれた俺と、世間知らずなアイツは恋沙汰の障害に燃えていた。たまに抜け出して娑婆に出ることもあったな。家でゲームをしたり、自転車を2人乗りして、田舎の澄んだ星空を見に行ったりだとか、いろんな事があった。今でも鮮明に覚えている。奴の匂い、体温、呼吸のタイミング、鼓動、何もかも俺の細胞60兆個全てに刻まれているんだ。俺は奴と結婚して家庭を持ちたかった。幸福を掴んで、マイナスから始まった俺の人生を0に戻したかったんだ。奴とならできる。そう信じていたんだ。奴は高校を卒業し大学生になった。奴と俺は物理的に離れこそしたが、一人暮らしを始めて、親の束縛から解放された。その時からコソコソせずに、連絡が取れるようになった。俺たちはSkype通話を狂ったようにしていた。一日平均5時間はしていたし、ひどいときには11時間も通話したこともあった。今思うと、そんなに毎日話す事柄なんかあったか?奴は俺と何年も話しているせいで、言動が俺に似てきた。イカれたBADASSに近づいたんだ。そのせいで、奴はあっちの大学で野郎共に大層モテたそうだ。慢心して自分を見失う程にな。奴は俺の精神的強さを、自分の強さと勘違いすることが多くなった。根底的に世間を知らないアイツは、よく判断を誤り、道を踏み外しかけた。イカれた言動をしながら、冷静さを保っている俺とは違って、奴は危なっかしかった。まぁ仕方ない。実際に触れ合えないのは寂しいもんな…。女ってのは反吐が出るほど弱いんだ。奴と喋っていると、時々2人の将来の話をすることもあった。俺は奴と家庭を持ちたいと言った。だが、奴の返事はいつも曖昧だった。俺とつかず離れず。毎日24時間の4分の1もの時間をSkype通話に費やしていながら、アイツは俺から離れようとしていた。毎日電話をかけてくるわりには、俺のことが必要なくなったような素振りをいつも見せた。もちろん、その次の日も8時間近く通話するんだが。奴は俺から離れたかったんだろうな。奴はいつからか知っていたんだ。俺と結ばれてはいけないってな。俺がエリート宗教家系の継承者にさせられ、その血を次の代に繋げなくてはならない。奴はそれを全部知っていた。そして俺に迷惑をかけまいと、自分を捨てたんだ。アイツ、子供が産めない体質だったんだ。当然、俺の親族もそんな出来損ないを受け入れるはずも無く、Corpseに無言の圧力をかけ、突っぱねたんだ。アイツはそれで絶望した。やがてアイツは狂ってしまって、自分がやっていることすら理解できなくなった。絶望して、堕落して、腐っちまった。俺が求道者として教会生活をしている間、あの野郎は地獄でのたうち回ってやがった。俺の呼びかけも聞こえなくなっていた。奴は嘘と現実逃避、地獄の構成しかできなくなった。俺は奴を助けたかった。そりゃそうだろ? 例え、腐りきっていても7年も連れ添った相方だったんだ。アイツ以上に必要な物なんかサイコな俺には無かった。なんとしても奴を助けたかった。その時にはもう、俺は教会で求道者をやっていたこともあり、奴に聖書を渡し、説教でもしてやろうと思った。俺は教会の牧師に1つの頼み事をした。「信仰がまだ薄い俺だが、この日に相棒の為に遠方へ向かう。そこは地獄の中心だろうが、そこで日曜礼拝を行いたい。御心に適う司式と説教ができるよう祈って欲しい」と。事情をよく知っている牧師は祈ってくれた後、俺を優しく送り出した。その時の記録があるな?興味があるなら再生しろ。

2016/03/27
主よ
改心した私よりもなすべきことを知っていながら実行できない愛する者に決断の勇気をお与えください。また私に彼女への勇気が与えられるよう使役してください
主よ
悔いの無いよう 最善を尽くせるよう彼女に力をお与えください。
主よ
貴方が我々を許したよう 私も彼女を許します。それにより彼女を次の許す側の人になれるよう導いてください。
主よ
間違いを熟知していながら死の道を歩む彼女に どうか祝福をお与えください。そして清き道へ導いてください。
主イエスキリストの御名のもとに お祈りさせていただきます。 アーメン。

そして前日の土曜、地獄に着いた。奴の家だ。その時のもあるか?再生してくれ。
2016/03/27
愛する者の部屋を見てショックを受けた
その部屋には貧困、ずさんな生活、家に生活が根付いていない痕跡、タバコなどの俗的な物、忌まわしき夜の世界からの土産。それらが部屋を蹂躙していた。
どんな寂しい生活をしているのか。どんな虚しい生活をしているのか。どんな不便な生活しているのか。どれほど清さから離れているのか。どれほど救いが無いのか。
思わず涙が溢れた。守ってあげられなくてゴメンねと泣きながら謝った。
涙が止まらなかった。

あぁ、懐かしいな。相変わらず反吐が出るな。あの箱入り娘が、夜な夜なキャバレーで働いているとはな。部屋に露出の多い薄手の衣装が散らかっていた。大量のゴミ袋、浮気相手の男の服。そんな光景が広がっていた。だが、それは俺が鬱病でのたうち回っていた時に見ていた景色となんら変わりはなかった。あの苦痛に満ちた日々と何も変わらない。俺はもう地獄に慣れている。その晩、奴の浮気相手が帰ってきた。その男は俺と話したがっていた。そのMF野郎は中卒で、キャバレーのスタッフとして働いているらしい。前の女との子供がいるが、結婚どころか認知もせず、そのガキを放置しているらしい。そのガキには籍があるのか?知ったこっちゃない。唯一わかるのはそのガキが3歳だったことと、成長して次の世代に同じような低俗極まりない地獄を作るってことだけだ。男の全財産は9620円。前の女に通帳と家を盗まれて、今は家が無くCorpseの家に居候しているそうだ。そいつの話は実に低レベルだった。どれだけCorpseとセックスをしているだとか、最近バイトの後輩を殴って病院送りにしただとか、離婚すればするだけ人生経験が豊かになるだとか、そこいらの吐瀉物にも劣るような話ばかりだった。隣で聞いていたCorpseが情けない顔をしていた。そりゃそうだ。昔、俺たちは、あんだけ社会の底辺共を見下していたんだ。隣にその代表格みたいな奴を連れていたんじゃ、笑いもんだよな。俺の心はその時、地獄の渦中で慟哭した。必死の祈りだ。

主よ
何故我々は間違いを犯すのですか?
何故腐った私たちに滅びを与えて下さらないのですか?
何故私たちはこんなにも世界を汚くしてしまうのですか?
何故私たちはこんなにも罪深いのですか?
主よ
私たちをどうか助けて下さい。貴方がいないなら、この世界に価値はありません。
私たちには貴方が必要なのです。

俺の高慢も理想も希望も平和も愛する者も、
地獄で全部、消し炭になっちまった…。
俺が本気でクリスチャンになったのは、そこからだ…。

そいつとの、クソみてぇな時間を過ごした後、朝の10:30に礼拝を行うことを2人に伝えた。そのMF野郎のことも祈ってやらなくてはならない。その時、そう思った俺はマジで清かったな。次の日の朝まで俺は眠った。部屋はとても寒かった。朝、そいつとCorpseのペッティングの音で目が覚めた。そいつらはすぐに起きてこず、朝10時25分になっても、動かなかった。32分頃、そいつらは風呂に入った。俺は狭く、とても寒い部屋で祈り続けた。11時15分頃、礼拝を始めた。受洗もやってねぇクソガキが司式をしてだ。賛美歌、主の祈り、説教、献金(高知一粒の麦あて)、祝祷、全部やってやった。説教の内容はよく覚えている。ルカ福音書の3つの例え話。そしてルカ23:43だ。どんだけ堕落しても、神は俺たちをずっと愛したがっている。そして、どんだけクソみてぇな状況でも、主の元に救いは、楽園はある。主を求めろ。そこに希望がある。それが信仰だ。俺はそれを伝えた。中卒の男は話に「なんか難しかった」とカスみたいな感想を述べた。Corpseは泣いていた。俺は全てをやり遂げた。その時の記録がある。

2016/03/27
十字架の愛が完全に踏みにじられた世界で礼拝を催した。そして司式を完了した。この一戦で私の信仰心はとてつもなく強くなった。信仰の盾は忌まわしき炎の矢をへし折って、着払いで悪魔に返してやった。地獄を平然と歩けるようになった。地獄で古の預言を口ずさむ。我が信仰は報われた。
別れ際、Corpseに最後の質問をした。「戻ってこい。今なら引き返せる。」奴は俯きながら答えた。「エリコは苦難があったとき、2倍、3倍強くなって必ず帰ってくる。でも、私たちは違う。辛い時、2まわりも3まわりも削れていってしまうの。ありがとう。ドクタージェリコにごめんなさいと伝えておいて。」
俺は「そうか…、ドクタージェリコ、奴もああ見えて地獄出身だ。こういうのは慣れているさ… じゃあな。」そう言って、俺は高知の教会に帰還した。俺はそこの牧師に会うや否や、こう伝えた、「クリスチャンになりたいです!!」と。牧師は地獄から帰ってきた俺の顔を見て、全てを理解し、黙って頷いた。誰もが加害者だった。俺の家の腐った血統主義も、あのMF野郎も、Corpseも、そして俺も。親族と同様、知らずとはいえ、子供のいる家庭を夢見て、子を産めないCorpseのことを傷つけてしまったのだ。私も加害者だ。我々は決して「完全」にはなり得ない。人間だけでは限界が来る。故に「救世主」が必要なのだ。その為の信仰なのだ。もう誰にも、我々のように悲しい運命を背負わせてはいけない。希望を守らなくてはならない。誰かが地獄の底から立ち上がり、戦わなくてはならない。

そういうわけで、俺はクリスチャンになったわけだ。それでどうなったかって?知りたがりが。まぁ良い。ここまで来たんだ、どうせなら最後まで付き合ってもらおう。これが最後の話だ。

 Jericho-Princessの話をしてやろう。
キリスト者になった俺は、教会で奉仕活動をしていた。俺は教会に従事することに不満なんかこれっぽっちも無かった。だが、俺の教会活動のことを良く思ってない奴らもいた。親族だ。俺もびっくりした、まさか俺の知っている親族全員が教会活動に反対だなんてな。そんな俺が帰省して、改まった態度を取った時、親族共はとても警戒していた。奴らは俺が統一教会だとかモルモン教だとかものみの塔だかの、汚ねぇバッタモンに入信したと認識してやがった。迷惑な話だよな。立ち上がって、「俺、キリスト教徒になりたいです。」そう言って、また一悶着だ。親族は「キリスト教は白人がやることだ。この土地の信仰を持つ我々には関係が無い。下らんことは二度と言うな。死んだお前の母さんを悲しませるな。」そう言って、俺を突っぱねた。ある日、母親の法事があって、俺も当然参加した。法事の後、親族で飯を食う機会があって出させられた。非難されるのはわかっていたが、出ざるを得なかった。だが状況は少し想定外の方へ進んだ。奴らは俺の言動と態度に驚いていた。まぁ無理も無い。すぐとち狂って破壊活動を行うサイコ野郎が誠実になっていたんだ。爺さんは「何があったか聞きたくないが、お前はホントに成長したな。少し前と別人のようだ。」と妙に感心していた。教会での生活に前みたいな攻撃性も、破壊も、争いも必要なかった。そんな不要な物は、信仰生活の中で削り取られていったんだ。それに大事な物を失った俺は、以前と比べ2倍、3倍と精神的に、本当の意味で強くなっていた。やっぱりアイツは俺の事をよく知っていたんだ…。 話を戻そう。いつだったか、中四国の教会で集まって子供のための奉仕を行うキャンプがあったんだ。お前も行ったから覚えているはずだ。暑い夏だったよな。俺にとって、キャンプのことは重要では無かった。大事なのは帰り道だ。以前から牧師は「いつか君の実家に挨拶に行かなくてはならない」とよく言っていた。キャンプの帰り道近くに、あの忌々しい大きな家がある。キャンプで存分に楽しんだ後、極右で排他的で、古い物を良しとする、あの腐った根城に俺たちは殉教覚悟で乗り込んだんだ。親父と婆さんが俺たちを迎えた。親父は俺たちが来るのを知っていた。1時間か2時間、俺たちは話し合った。聖書神学をがっつり勉強していた俺は奴らの質問に整然と答えられた。奴らの質問は正直愚問だった。

Q先祖を大事にできないの?
A先祖の大元はアダムとエバ、そして、そのクリエイターだ。私はそれを尊重しているだけだ。お前達は何故その意思を大事にしない?
Qどうしてもっていうなら、クリスチャンになっても良いけど、勘当するよ?二度と名字を名乗らせないよ?
Aそれなら話が早い。ご承諾感謝します。俺のIDはJericho-Princess。以後、お見知りおきを。
Qなんで反旗を翻すの?
A今のこの家の泥船状態を是正するためだ。一家は離散状態。奴の遺言は棄却される。俺はこんな腐った風習を次の世代に残したくない。全てを滅ぼし、全てを紡ぐためだ。
Qこんなに大きな家と、たくさんのお金があるというのに、貴方は何が不満なの?
Aここには何も無い。

そんな会話が続いた。最終的に婆さんは「もう喋り方が気に食わん。人に物を言う態度ではない。」と意味不明な悪あがきを始めた。最後がいちゃもんとはな。神妙な場面の中、申し訳ないが笑っちまった。俺の隣に座っていた牧師も「え~?」みたいな顔をしていた。あれはマジでケッサクだったな。そんなこんなで、その日は終わった。親父は帰り際に、俺に旅費を渡してくれた。宣戦布告しに来た俺に対してだ。俺たちはお互いに、引くに引けない立場で敵対してしまった。だが、俺たちは腐っても親子だ。俺と親父は無言で敬礼を交わし合った。お互い涙を流しながらな。親族が俺の思想に慣れ始めた頃、俺は実家にちょくちょく帰省するようにした。家族みんな憎み合っているが、俺だけでも平和をもたらすような活動をしたい。そうやっていくうちに、やがて親族は少しずつ仲良くなった。厳密に言えば、親族が融和的な活動を拒否した際の、俺の憤怒。それを皆回避したかっただけだが、まぁ細かいことは抜きだ。荒療治ながら、効果はあるだろ?これも1つの賜物だ。しばらくするうちに親族の中で俺の評判は少し上がった。「異なる思想でありながら、1番家族の事を思っている。家族思いで優しい平和主義のカルト野郎」ってな。早く教会を抜けろとは今でも言われるが、俺がそんな戯言を聞かない事も奴らはよく知っているさ。なんたって家族だからな。ほとぼりが冷めた後、親父と電話する機会があった。親父と久しぶりにじっくり話をした。親父は俺に謝った。母親がくたばって、しばらく堕落していたことを。俺に迷惑をかけたことを。俺は、「咎めるようなことは何も無い。お前はようやった。」そう答えた。親父はクソだったが、それでも愛おしい。クリスチャンになって俺は丸くなっちまった…。親父は、「お前は優しすぎる…それでは生き残れんのじゃ…」と半泣きで答えた。しばらくして、俺は1番大事な話を、その時初めてした。Corpseのことだ。親父は自分の息子が悲劇的な別れをしたことを初めて知った。「子供が産めんから何じゃ!?迎えたら良かったろう!?」親父が過ぎ去った人間を守ろうとした。だが俺は答えた。「それをさせなかったのは…俺たちの血だろう?」それが結果であった。それだけは事実だった。「そんなこと言うな。涙が…止まらんだろうが…ボケが…クソ…」親父は泣き崩れた。親父も愛する妻をガンで失った。奴も知っていたんだ。愛する者を失う悲しみをな。そして息子の愛も奪ってしまった。だが俺は何も咎めなかった。俺だってわかっているつもりだ。親父が好き好んでこんな腐ったことをやっているわけじゃないって、好き好んで息子の人生を滅茶苦茶にしているわけじゃないってな。親父もまた、哀れな使い捨て要員だ。血筋に生きて、血筋に死ぬ。奴も戦場から抜け出せない被害者なんだ。俺たちが求める物が同じでも、敵対しなくてはならない。やっぱりここも地獄でしたってわけだ。今後も楽しくなりそうだな。

俺の行くところは大抵地獄だ。あぁ心配はいらない。もう慣れっこさ。今後もクソみたいなことはいっぱいあるだろう。でもきっと、状況は少しずつ改善していくだろう。希望はまだ死んじゃいない。俺がまだ、くたばってないからな。

俺の母親の遺言はほとんど棄却された。
だが棄却されなかった遺言が、実は1つだけある。

「自分が正しいと思ったことを、自分を信じて、真っ直ぐやり遂げて。
貴方にはきっと、それができるから。」

 私はJericho-Princess。キリスト者である。

以上が俺の話だ。あぁ、見ろよ?もう朝だ。お前と話すと、いつも徹夜になるな。この記録は不要になったら処分してくれ。まぁ、お前は大事にするだろうがな。またいつか、そっちに寄ろう。その時は、お前の話もじっくり聞かせてくれよな。
それと、受洗おめでとう。
またな、シン友よ。
 

ルカによる福音書23章43節

するとイエスは、
「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と言われた。